おもてなしを追求すること 飽きずに学び続けること
日頃ご来店のお客様になかなかお伝えできない
遊花膳こうの 店主・河野 通朗 の、仕事に対する心情を
お話しさせていただきます。
おもてなしという日本料理の心
日本料理は、味や見た目が美しいだけでなく、日本人としてあるべき姿の象徴です。日本人は常にお互い助け合ったり、教え合ったりしてきた人種。誰に対しても何かをしてあげたいと思い、それを自分の喜びと思っている。相手は何が嬉しいか一生懸命に考える。それが「おもてなし」の原点です。そして、和食職人が持つべき大原則だと思います。
ただ、料理の技術をいくら磨いても、おもてなしには足りません。「こうの」は、料理を出すタイミングや間、お声がけ、店の雰囲気、季節感、またお祝い事への配慮など、人間味のある美味しさを通じて「おもてなし」を追求したいと思っています。
心遣いを欠かさず、お客様が笑顔でお帰りいただける店でありたい。お客様にとって何が嬉しいかを一生懸命に考えたい。そのうえで素材を吟味し、料理に手間をかけることが大切だと考えています。
食材への感謝の気持ちを大切に
旬の醍醐味を感じられる時期は限られています。そのわずかな瞬間を逃さず感じていただく。特に日本料理は彩りと香りが重要です。僕は「はしり」というものを大切にし、これから訪れる季節を一足先に感じてもらうことが喜びでもあります。
料理をしながらいつも思います。命あるものをいただく以上、食材には最高のステージを与えたい。骨の髄まで決して無駄にすることなく、感謝の気持ちを込めて、それぞれに合った料理法で残さず使い切る。これも料理人として忘れてはならないことです。
日本文化を学び、自然に学び、お客様に学ぶ
僕にとって、生きることは最高の学びであり、考える時間は最高のご褒美であると思います。修業時代は先輩方が徹底的に教えてくれたことを面倒くさいと感じたこともありましたが、それがあったからこそ今までやってこれました。今も自分の足りなさを知り、もっと勉強しようといつも思います。
和食の料理人は日本文化を学び、自然に学び、お客様に学ぶべきだと思っています。そしてその瞬間ごとに自分が出来る精一杯のことをやりきりたい。作り手の自分がいて、まわりのスタッフに支えられて、お客様とともに作っていくお店が「こうの」です。
日本料理は素晴らしいものです。繊細かつ大胆に。これが僕の料理のテーマです。日本料理は日本人の心、そんな、意味ある仕事をしていきたいと思います。
向上心を持って、今日よりも明日、もっと美味しいものを作ろうとする姿勢を持ち続けること。そのためには飽きずに学び続けていきたいと思います。
いつも料理に 感動、サプライズを。
河野 通朗
プロフィール
遊花膳こうの 店主
河野 通朗
こうの みちあき
日本料理の世界に16歳で飛び込み、料亭、ホテルで修行。35歳で「遊花膳こうの」を開店。カウンターの目利き客と対峙する気概で日本料理に取り組むが、その姿勢が「自分中心の視点だった」とすぐに改め、店舗を個室中心に改装し、現在は日本料理による最高のおもてなしとは何かを追求する日々。
平成22年に「日本調理師連合会師範」を異例の40歳にして取得。独自の野菜彫刻はお祝い事などに供され好評を博している。オフではロックギタリストとしての顔も持っている。